【個人事業主必見!】生活費を経費にできる家事按分とは?計上できる経費や計算方法について解説

「家事按分って何?」「生活費を経費にできるって本当なの?」
このような疑問を抱いている方も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、「家事按分の基礎知識」について分かりやすく解説していきます。また、家事按分できる主な経費や計算方法、確認したいポイントや注意点なども紹介しています。個人事業主やフリーランスとして働いている方は、ぜひ参考にしてみてください。

目次

家事按分とは

昨今は、自宅でビジネスを行う個人事業主やフリーランスの方が増えてきています。

自宅で仕事をする場合は、家賃や水道光熱費の一部も「事業のために必要な支出」となるため、経費として計上することが可能です。ただし、家賃や水道光熱費の全額が経費になるわけではありません。

一定の基準のもと、「プライベートの支出」と「業務上必要な支出」を分ける作業が必要になってきます。これを「家事按分(かじあんぶん)」といいます。「自宅でビジネスを行っている人が、生活費に埋もれてしまった事業費を正しく算出すること」と言い換えてもよいでしょう。

例えば、毎月の家賃が10万円だった場合、「7万円をプライベートの支出、3万円を必要経費として計上する」といったイメージです。なお、家事按分の割合(按分比率)に関しては、明確な定義がありません。「根拠が明確である」と客観的に判断できるのであれば、個人事業主・フリーランスそれぞれが自分で基準を定められます。

家事按分できる条件

上述の通り、自宅で仕事をする場合は、家賃や水道光熱費の一部も「事業のために必要な支出」となるため、家事按分したうえで経費計上することができます。

しかし、何でもかんでも家事按分できるわけではありません。家事按分をして経費計上するためには、以下の条件を満たしている必要があるのです。

家事按分できる経費(所得税法施行令(家事関連費)第九十六条)

1: 家事上の経費に関連する経費の主たる部分が不動産所得、事業所得、山林所得又は雑所得を生ずべき業務の遂行上必要であり、かつ、その必要である部分を明らかに区分することができる場合における当該部分に相当する経費

2: 前号に掲げるもののほか、青色申告書を提出することにつき税務署長の承認を受けている居住者に係る家事上の経費に関連する経費のうち、取引の記録等に基づいて、不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき業務の遂行上直接必要であったことが明らかにされる部分の金額に相当する経費

出典:e-Gov法令検索「所得税法施行令(家事関連費)第九十六条」
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=340CO0000000096#Mp-At_96

また、上記法令内の「主たる部分」「業務の遂行上直接必要であったことが明らかにされる部分」は、以下の項目を総合勘案して判定されます。

  • 業務の内容
  • 経費の内容
  • 家族及び使用人の構成
  • 店舗併用の家屋
  • その他の資産の利用状況

参考:国税庁|「家事関連費(第1号関係)」
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/07/01.htm

簡単にまとめると、

  • 本当に事業のために必要な支出なのかどうか
  • その根拠を明確に提示できるのかどうか
  • プライベートの支出分と事業のための支出分を明確に区分できるのか

が重要なポイントだといえるでしょう。

以上の点を踏まえたうえで、次章では、「具体的にどの費用なら家事按分できるのか」を解説していきます。

家事按分できる主な経費・計算方法

それでは、「家事按分できる主な経費」を紹介していきます。併せて、その計算方法も解説するので、ぜひ頭に入れておきましょう。

家事按分できる主な経費6選

  1. 家賃
  2. 電気料金
  3. ガス料金・水道料金
  4. 通信費
  5. 自動車関連費
  6. その他

順に見ていきましょう。

家賃

まずは、家賃(地代家賃)です。

自宅で仕事をしている場合(自宅を事務所としている場合)は、家賃を家事按分し、「地代家賃」という勘定科目で経費計上することが可能です。

基本的な計算方法としては、以下の2通りが挙げられます。

  • スペースの割合(床面積の割合)を基準として計算する方法
  • 仕事をしている時間を基準として計算する方法

 

スペースの割合(床面積の割合)を基準として計算する方法

※家賃が月額10万円。家全体の居住スペースが50㎡、仕事に使っているスペースが10㎡の場合。

按分率:10㎡÷50㎡=0.2(20%)
経費計上できる月額家賃:10万円×20%=2万円

 

仕事をしている時間を基準として計算する方法

※生活スペースと仕事スペースが分かれておらず、リビングで仕事をしているような場合。
※家賃が月額10万円。週5日間、1日8時間仕事をしている場合。

1週間の仕事時間:8時間×5日間=40時間
1週間の総時間:24時間×7日間=168時間

按分率:40時間÷168時間=0.2380……(約24%)
経費計上できる月額家賃:10万円×24%=2万4,000円

電気料金

続いて、電気料金です。特にパソコンを使って仕事をしている場合は、必ず経費計上することをおすすめします。

電気料金を家事按分する方法は、主に以下の2通りです。

  • コンセントの数を基準として計算する方法
  • 利用時間を基準として計算する方法

 

コンセントの数を基準として計算する方法

※1ヶ月の電気料金が8,000円。自宅のコンセントの総数が10個、そのうちの2個を仕事用に使っている場合。

按分率:2個÷10個=0.2(20%)
経費計上できる月額電気料金:8,000円×20%=1,600円

 

利用時間を基準として計算する方法

※1ヶ月の電気料金が8,000円。週5日間、1日8時間仕事をしている(コンセントを利用している)場合。

1週間の仕事上のコンセント利用時間:8時間×5日間=40時間
1週間の総時間:24時間×7日間=168時間

按分率:40時間÷168時間=0.2380……(約24%)
経費計上できる月額電気料金:8,000円×24%=1,920円

ガス料金・水道料金

次に、ガス料金・水道料金です。

ガスや水道の利用が、自身が手掛けているビジネスと直接関係している場合は、ガス料金及び水道料金を家事按分することができます。例えば、自宅で料理教室を開いている場合などは、必要経費として認められるでしょう。

ただし、プログラマーやWebライターのように業務上ガスや水道を必要としない場合は、家事按分することは難しいため十分に注意してください。

なお、ガス料金や水道料金を家事按分する際は、「事業における使用時間」を基準として計算していきます。

 

ガス料金を家事按分する方法

※1ヶ月のガス料金が2万円。週5日間、1日3時間仕事上でガスを利用している場合。

1週間の仕事上のガス利用時間:3時間×5日間=15時間
1週間の総時間:24時間×7日間=168時間

按分率:15時間÷168時間=0.0892(約9%)
経費計上できる月額ガス料金:2万円×9%=1,800円

通信費

自宅のインターネット回線を使ってビジネスをしている場合は、家事按分を行い、「通信費」という勘定科目で経費計上することができます。また、スマートフォンや携帯電話を業務上頻繁に利用している場合も、同じく「通信費」として経費計上することが可能でしょう。

基本的には、使用日数もしくは使用時間を基準として計算していきます。

 

使用日数を基準として計算する方法

※1ヶ月のインターネット使用料金が1万円。1週間のうち、5日間仕事をしている(仕事でネット回線を利用している)場合。

按分率:5日間÷7日間=0.7142(約71%)
経費計上できる月額通信費:1万円×71%=7,100円

 

なお、【使用時間を基準として計算する方法】については、ガス料金や水道料金の場合と同様です。

自動車関連費

保有している自動車をプライベートだけでなくビジネスでも使っている場合、家事按分して経費計上することが可能です。

例えば、以下のような自動車関連費があります。

  • 自動車本体の購入費用
  • ガソリン代
  • 駐車場料金
  • 自動車保険料
  • 自動車税
  • 車検費用
  • 高速代

ここでは、「ガソリン代の家事按分方法」について紹介します。主な計算方法は、以下の2通りです。

  • 走行距離を基準として計算する方法
  • 使用日数を基準として計算する方法

 

走行距離を基準として計算する方法

※1ヶ月のガソリン代が8,000円。走行距離が200kmで、そのうちビジネスでの走行が50kmだった場合。

按分率:50km÷200km=0.25(25%)
経費計上できる月額ガソリン代:8,000円×25%=2,000円

 

使用日数を基準として計算する方法

※1ヶ月のガソリン代が8,000円。週に5日間、仕事で自動車を利用する場合。

按分率:5日間÷7日間=0.7142(約71%)
経費計上できる月額ガソリン代:8,000円×71%=5,680円

その他

上記で紹介したもの以外にも、家事按分できる経費はいくつか存在します。
例えば、以下の通りです。

  • 租税公課(固定資産税など)
  • 消耗品費(価格が10万円未満の物品、使用期間が1年未満の物品)
  • 新聞図書費(新聞や雑誌など)
  • 工具器具備品(価格が10万円以上で減価償却する物品)
  • 修繕費(施設備品のメンテナンス、修理など)

家事按分できない費用

上述の通り、全ての費用を家事按分することはできません
例えば、以下の5項目は経費に計上できないため、家事按分の対象外です。

  • 持ち家の住宅ローンの元本
  • 客観的に認められない諸会費、旅費
  • 配偶者や親族に支払う地代家賃、レンタル費用
  • 家族のみが従業員である場合の慰安旅行
  • 大学院の授業料

間違えて経費計上しないよう、十分に注意してください。

青色申告と白色申告における家事按分

青色申告と白色申告では、家事按分の考え方に多少の違いがあります。

白色申告の場合、家事関連費のうち、業務の遂行上必要である部分が50%を超えていないと、家事按分が認められないことになっています。つまり、「仕事で半分以上使っているもの」しか家事按分できないわけです。家賃や電気料金などは、基本的にプライベートの利用がメインであり、ビジネスでの利用はせいぜい20%~30%くらいでしょう。ゆえに、家事按分が認められないことになってしまいます。

一方で、青色申告の場合は、業務の遂行上必要である部分が50%を下回っていても、家事按分が認められます。つまり、全てのケースで家事按分が認められるわけです。そのため、一般的には「青色申告の方が有利」とされています。

ただし、国税庁は、実際には青色申告と白色申告の違いを明示しているわけではありません。青色申告であろうと白色申告であろうと、50%を超えていても下回っていても、明確な根拠を示せているのであれば、全てのケースで家事按分が認められるので、ご安心ください。

家事按分を行った際の記帳方法

「家事按分を行った際の記帳方法が知りたい」という方もいるでしょう。

ここでは、「自宅兼事務所の家賃を支払ったケース」で考えてみましょう。家賃が10万円、そのうちプライベート分が7万5,000円、仕事分が2万5,000円だったとすると、以下のような記帳になります。

借方 貸方
地代家賃 25,000 普通預金 100,000
事業主貸 75,000

必要経費部分は「経費に応じた勘定科目」を設定し、プライベート部分については「事業主貸」という勘定科目を設定するようにしてください。

家事按分における注意点4選

この章では、「家事按分における注意点」について簡単に解説していきます。
具体的には、以下の4点です。

  1. 過剰な経費計上は避ける
  2. 基準を曖昧にしない
  3. データを必ず残す
  4. 分からないときは専門家に相談する

ぜひ参考にしてください。

過剰な経費計上は避ける

まず、過剰な経費計上は避けるようにしましょう。

なるべく多くの経費を計上できれば、それだけ節税効果が望めますが、過剰に経費計上してしまうと税務署から指摘されるリスクが高まります。

過剰な経費計上の例として、実際には自宅の20%程度のスペースしか使っていないのに、60%のスペースを業務利用していると見せかけ、地代家賃を実際よりも多く計上するようなケースが挙げられます。

基準を曖昧にしない

基準を曖昧にしない」ことも大切です。

例えば、先月は「床面積の割合」を基準として家賃を家事按分したにもかかわらず、今月は「仕事をしている時間」を基準として家事按分した場合、まったく同じ状況でも計算結果が変わってしまいます。

毎月の家賃は同じ金額なのにコロコロと按分比率が変わってしまうと、合理性や客観性に欠けるとみなされ、指摘されるかもしれません。

そのため、自分で明確な基準を定めたら、その後はなるべく変更しないことをおすすめします。

データを必ず残す

家事按分に限った話ではありませんが、確定申告に関わるデータは、絶対に全て残すようにしてください。

例えば、以下のものが挙げられます。

  • 領収書やレシート
  • 請求書
  • 按分比率を算出したデータ(自宅の図面や計算式など)
  • 車の走行距離データ

データを残しておけば、仮に税務調査が入ったとしても、しっかりと自信をもって根拠を説明できるでしょう。

分からないときは専門家に相談する

「按分比率をはっきり決められない」
「家事按分について分からないことが多すぎる」
「調べても調べても情報が出てこない」

このような場合は、一人で考えこまずに、専門家に相談するのがベストです。税務署の職員税理士を探し、気軽に質問してみてください。分からないからといって、自分でなんとなく計算するのは危険です。困ったときはプロの力を借りましょう。

税務調査で指摘を受ける例

無事に確定申告が終わっても、申告内容や計算方法が適切であるかどうかは、その後で税務署が判断します。

場合によっては、税務調査が入るケースもあるでしょう。確定申告の修正を指示されることもあれば、追徴課税を要求されることもあるかもしれません。

税務調査で指摘を受ける具体例としては、以下が挙げられます。

  • 必要以上の按分率で計算している
  • 同居親族に支払う家賃を経費計上している
  • 按分比率が明確に定まっていない
  • 100%プライベートの支出を経費計上している
  • 不自然な数字が多い

なるべく税務調査が入らないよう、常に正しい計算を心掛けてください。また、いざ税務調査が入ってもきちんと対応できるように、データは必ず残しておくようにしましょう。

まとめ

生活費の一部を経費にできる「家事按分」は、個人事業主なら必ず知っておきたい仕組みです。

確定申告に慣れていないと、どのように家事按分すればよいのか、ついつい迷ってしまうこともあるでしょう。適当に計算すると後々税務署からの指摘が入る可能性が高まるため、不明点が出てきたらきちんと調べる、場合によっては専門家に相談するなどの方法で、慎重に進めていくことをおすすめします。

ぜひ当記事も参考にしながら、家事按分について理解を深め、正しい経費計上を行ってください。

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