「地方に仕事がない」と悩む人の声をよく耳にしますが、実際のところはどうなのでしょうか。
地方には、大都市圏への人口流出や地方の高齢化、そして特定の職種や業種の求人が少ないなどのデメリットがある反面、その土地ならではの魅力や働き方、さらには地域での就職・生活を支えてくれる支援制度も存在します。
この記事では、地方での仕事事情を徹底解説し、地方でのキャリアを考えている方に役立つ情報をお届けします。地方の魅力を再発見し、新しい働き方や生き方を模索してみませんか?
目次
地方に仕事がないって本当?地方での仕事事情を徹底解説
日本の地方都市や田舎には「仕事がない」というイメージが根付いていますが、実際のところはどうなのでしょうか。
確かに、大都市圏と比較すると、地方では求人数や業種の選択肢が限られているのは事実です。ただし、地方には、大都市にはない仕事の魅力やチャンスが溢れていることも見逃せません。
また、地方での生活は、人間関係の濃さや生活コストの低さなど多くのメリットがあります。まずこの章では、地方での仕事事情を解説します。地方でのキャリアを考える際の参考にしてみてください。
「地方に仕事がない」という言われる理由と現状
「地方には仕事がない」という言葉を耳にすることは少なくありません。しかし、この言葉の背後には、多くの要因や背景が存在します。
「地方に仕事がない」といわれる大きな要因として、そもそもの人口や事業者数が、地方より都心の方が多いことが挙げられます。加えて、大都市圏への人口流出や地方の過疎化、さらには高齢化が進行する中での継承者不足など、複数の要因が絡み合っています。また、特定の職種や業種においては、地方での求人が少ない、あるいは存在しない場合もあります。
しかし、地方には地方独自の資源や文化を活かした新しいビジネスの取り組みや地域おこしの活動など、都市部にはない独自の魅力やチャンスが存在します。
まずは、「地方に仕事がない」と言われる理由を深掘りし、その背後の仕事事情や課題を見ていくことが重要です。地方の事情を理解することで、仕事探しやキャリア構築において新たな視点やアプローチを持ちやすくなります。
大都市圏への人口流出と若手人材不足
近年、日本の地方地域では、大都市圏への人口流出の影響を大きく受けています。とくに若い世代が都市部の大学や就職の機会を求めて移住することが増えたことが、地方の人材不足を招いている要因のひとつです。
日本の都市圏、とくに東京圏への人口流出が拡大している現状が、総務省の統計からも明らかになっています。「住民基本台帳人口移動報告 2022年(令和4年)結果」によると、2022年の日本国内における市区町村間移動者数は531万972人、前年に比べて1.2%の増加が確認されました。都道府県間の移動者数は255万3434人で、前年に比べて3.1%の増加が示されています。
東京圏は転入超過が続いており、2022年は前年に比べて1万7820人の拡大を記録しています。中でも東京都が転入超過数で最も拡大し、3万2590人の転入超過が確認されました。一方で、地方の多くの都道府県や市町村では転出超過が続いています。
大手企業や出版・広告、IT企業などは都市圏、とくに東京都に集中していることもあり、東京都での就職を希望する人が多いことが背景にあるようです。このような企業は資本力があり、採用広告やメディアへの露出、採用活動に積極的な企業が多い一方で、地方の企業では採用活動へのコストやリソースが十分でない企業も少なくありません。しかし、地方にはあまり認知されていないだけで、人材を切実に求める優良企業がたくさん存在しています。
地方の過疎化・高齢化による継承者不足
日本の地方部では、過疎化と高齢化が進行し、多くの地域での経済活動や社会構造に大きな影響を及ぼしています。
若い世代の都市部への流出によって地方の労働力が減少し、多くの事業経営者が後継者不足に直面しています。また、現在のオーナーが引退を考える年齢になっても後を継ぐ若い世代が不足しているため、事業の継続が難しいようです。家族経営の小売店や農家、伝統的な職人の仕事など、後継者が見つからずに廃業してしまうというニュースを一度は見たことがある人もいるでしょう。
地方の文化や伝統をどう守り続けるかについては、国や地域社会全体での取り組みや支援が求められています。
職種や業種によっては求人がない場合もある
地方には求人が少ない、あるいは存在しない職種や業種が存在します。これは、地方の経済構造や産業の特性、地域のニーズに起因しています。
たとえば、大都市圏ではIT企業やアパレル、エンターテインメント業界などの求人が豊富に存在しています。一方、地方都市や田舎ではこれらの業種の求人は限られていることが多いです。
逆に、地方では農業や漁業、地域資源を活用した観光業など、都市圏ではあまり出ない求人が多く見られます。また、特定の産業が盛んな地域では、それらに関連する求人が集中している場合もあります。
このように、地方の求人事情は地域の特性や産業構造に大きく影響されます。そのため、自身のスキルや経験、希望する業種や職種が地域の求人市場と合致しているかを事前にリサーチすることが重要です。適切なリサーチを行うことで、地方の中でも自分に合った仕事を発見できるでしょう。
地方で仕事する場合の選択肢
地方や田舎では、仕事の選択肢が限られていると先述しました。しかし、実際には地方独自の業種や多様な働き方が存在しています。
地方ならではの魅力や生活スタイルと密接に関連する仕事を選べば、地域社会に貢献しながら働くことができます。また、地域の企業や団体への就職はもちろん、自営業や業務委託、複業といった柔軟な働き方も選択できます。
ここでは地方の仕事・働き方について詳しく紹介します。
地方で求人の多い仕事: 一次産業、サービス業、医療・介護・福祉関係
地方での求人動向は、特定の業種での求人がとくに多い傾向にあります。
まずは一次産業です。一次産業は、地方の基盤となる産業であり、農業、漁業、林業などが主要な業種として挙げられます。これらの産業は地域の特性や資源を活かした仕事が中心で、地方ならではの魅力を感じることができるでしょう。
次に、サービス業も地方での求人が多い業種の一つです。観光地や温泉地など、地域の特色を活かしたサービスが求められ、接客や旅館の仕事などがあります。
また、医療・介護・福祉関係の仕事も地方での求人が多い業種として挙げられます。地方の高齢化が進む中、高齢者のサポートや地域医療の提供が重要となっており、人手が足りていない状況にある施設も多いようです。
地方での多彩な働き方:地方就職、自営業、業務委託、複業
地方では、以下のように多様性のある働き方を実現できます。もちろん地方企業への就職もひとつの選択肢ではありますが、視野を広げれば、以下のように多彩な選択肢から検討できます。
- 地方就職:地域固有の産業や文化を活かした仕事が多く、地域に根ざした活動を通じて地域社会に貢献できる
- 自営業:地方ならではのニーズを捉え、独自のビジネスを展開するチャンスあり
- 業務委託:特定のスキルや専門知識を活かして、複数のクライアントと契約を結びながら働く形態で、柔軟な働き方が可能
- 複業:複数の仕事を掛け持ちすることで、収入の安定とスキルの幅を広げられる
Webスキルを身につけて実力を上げると地方でも場所に囚われずに働ける
近年、テクノロジーの進化とインターネットの普及により、地方に住んでいても都市部と同じように仕事ができるようになってきました。このような背景から、Webスキルを持っていると、地方でも高い収入を得られるチャンスが増えています。
Webスキルとは、以下のようなインターネットを活用したビジネスに関連するスキルを指します。
- プログラミング
- Webデザイン
- Webライティング
- Webマーケティング など
これらのスキルを身につけることで、リモートワークでの稼働やフリーランスとして仕事に取り組めます。つまり、地方に住みながら都市部の企業と同等の待遇で働けるメリットを得やすくなるということです。
地方では、都市部と比較してWebスキルを持つ人がまだ少ない傾向にあるため、専門的なスキルを持っていると希少価値の高い人材になりやすいでしょう。地元の企業から即戦力として採用されることもありますし、地方でのキャリアを豊かにする大きな武器となります。
地方での仕事の探し方
「地方での仕事を探していて、なかなか自分にあった仕事が見つからない…」と悩んでいる人は多いかもしれません。ただ、地方での仕事探しは、都市部とは異なるアプローチが求められます。ネットで検索して求人を探す以外に、以下の探し方にも着目してください。
- 各都道府県のハローワークへの相談・検索
- 地方に特化した求人サイトでの検索
- 地方就職フェアへの参加
- 転職エージェントへの相談・求人紹介を受ける
- 地域おこし協力隊への参画
さまざまな探し方を組み合わせながら、自分の希望やライフスタイルにマッチした仕事を見つけましょう。
各都道府県のハローワーク
ハローワークは、日本全国に展開している公的な職業安定所で、地方での仕事探しには欠かせない存在です。各都道府県のハローワークには、その地域の特色やニーズに合わせた求人情報が豊富に揃っていることが特徴。大手企業の求人だけでなく、地元の中小企業や家族経営のお店の求人も多数掲載されています。
また、ハローワークのスタッフは地域の産業や雇用状況に詳しく、求職者のニーズに合わせて最適な求人を紹介してくれます。とくに地方では、ハローワークを利用すると、非公開求人や地元のネットワークを通じた紹介など、他の求人サイトでは得られない情報や機会に出会えることがあります。
地方での就職や転職を考えている方は、まずは最寄りのハローワークを訪れ、地域の実情や求人情報を直接確認してみるのがおすすめです。
最寄りのハローワーク所在地の確認や求人情報の検索は、以下のページで行えます。
地方に特化した求人サイト
地方に特化した求人サイトでは、大都市圏とは異なる地方独自の魅力やニーズに応じた求人を掲載しています。これらのサイトは、地元の文化やライフスタイルに合った仕事を探す際の強力なツールとなります。
また、地域の特色や魅力を前面に押し出しており、移住を検討している人にとっては、新しい生活のイメージを具体的にする手助けとなるでしょう。たとえば、海に近い地域の求人サイトでは、海産物加工や観光関連の仕事が豊富に掲載されていることが多いです。
さらに、これらのサイト運営会社は地方の実情にも精通しているため、求人情報に加えて地域の生活情報や移住支援制度に関する情報も提供している場合もあります。地方に特化した求人サイトを利用することで、都市部とは一味違った魅力的な仕事の機会を見つけやすくなるでしょう。
地方就職フェア
地方都市や市町村が主催・協力して行う就職イベントの「地方就職フェア」が各地方で定期的に開催されています。このフェアは、地方で働きたい求職者や学生に地方の魅力や就職の機会を紹介するために開催されます。
参加者は、地方の企業や自治体、地域団体などのブースに訪れ、採用担当者や現地の住民と直接交流できます。
地方就職フェアの最大の魅力は、地方の雰囲気や文化を実際に感じられる点です。多くのフェアでは、地方の特産品や観光情報、文化活動なども紹介され、参加者は地方の魅力を多角的に知ることができます。また、フェアでは地方の求人情報や生活情報、移住支援制度などの詳細情報も提供されるため、具体的な移住や就職の計画を立てるのにも役立ちます。
転職エージェント
自身の希望に合う仕事を紹介してくれる転職エージェントは、地方での就職・転職を検討するのなら、ぜひ有効活用したいサービスです。
転職エージェントの中には、UIターン特化型や地方に強いサービスもあります。そのようなエージェントは地方の求人市場に精通しており、公開されていない非公開求人情報へのアクセスが可能です。地方の企業は大々的な広告を出さないことも多いため、求職者が地方企業の求人を一人で見つけようとするのは多大な労力が必要です。希望する職種や条件に合う求人を効率的に見つけるうえで、エージェントは大きな手助けとなるでしょう。
また、転職エージェントは、応募書類の作成や面接対策など、転職活動全般をサポートしてくれます。地方の企業は企業文化や求める人材像が独特なケースがあるため、そういった点からも、地方特化型のエージェントのアドバイスが役立つはずです。
加えて、転職エージェントでは転職後のフォローやキャリアアドバイスも受けられるため、地方での新たなキャリアを成功させるために活用してみてください。
地域おこし協力隊への参画
次に挙げられるのが、地域おこし協力隊です。地域おこし協力隊とは、地方の過疎化や高齢化の進行を食い止めるため、都市部から地方へ移住し、地域の活性化に取り組む制度。地方自治体が中心となって運営され、若い世代や都市部の専門家が地方の魅力を再発見し、新しい価値を生み出す場として注目されています。
地域おこし協力隊に参画すると、地域の文化や歴史を深く学べるだけでなく、地域住民との繋がりを深め、共に地域を盛り上げる経験が得られます。また、地方での生活を「お試し」で体験できるので、将来的に地方への移住を考えている人にとっては有益な経験となるでしょう。
本制度では地域の実情に合わせた取り組みが求められるため、参画の際には柔軟な思考とコミュニケーション能力が必要です。しかし、その課題を乗り越えたときの達成感や成果は、計り知れないほど大きなものになるはずです。
地方で働く際の考慮点
地方で働くことを考える際は、ミスマッチとならないように、いくつか考慮しておくべき点があります。
本章では一般的に多くの人に当てはまる項目について取りあげます。ここで紹介する考慮点を踏まえつつ、自分のキャリアとライフスタイルに合った選択をしてください。
賃金の安さや働ける職種の限界について
地方での仕事を選択する際、多くの人が気になるのが賃金の問題でしょう。国土交通省の「地域、労働生産性の地域間格差」によると、一般労働者の所定内給与は東京が最も高く、そこから神奈川、大阪、愛知といった大都市圏が続き、これらの地域と比較して地方の給与は低い傾向にあります。このような給与の格差は、多くの若手労働者が大都市圏に流出する要因のひとつといえるでしょう。
また、地方によっては特定の職種や業種に求人が集中し、多様なキャリア選択が難しいという側面も考慮しなくてはなりません。とくに新しい技術や分野に関する仕事は都市部に集中していることが多く、地方でのキャリア形成に制約が生じることがあります。
とはいえ、地方には地方ならではの魅力や働きがいがありますし、「給与だけが仕事の価値ではない」という考え方もできるでしょう。地方で働く留意点とメリットを天秤に掛けて、自分にとっての優先度や重要度を加味して判断することが大切です。
若手が少なく働きづらい環境の対処法
地方で働くことを検討する際、若手労働者が少ない環境は、若い世代の求職者にとって懸念点となるでしょう。しかし、そのような環境でも快適に働くための対処法を以下に示します。
- 職場で信頼できる・話しやすい人に相談する
- アフターフォローが丁寧な転職エージェントやハローワークの担当者に相談する
- 地域の勉強会や交流会へ参加する
- SNSなどのオンラインコミュニティを活用する
事前に対処法を把握しておくことで、不安を軽減できるはずなので、ぜひ参考にしてみてください。
地元の優良企業への就職や都内企業におけるリモートワークの有無
地方での就職を考える際、地元の優良企業をターゲットにするのは賢明な選択といえます。地元の企業は、地域社会とのつながりが強く、安定した経営基盤を持っていることが多いからです。
一方、都内や大都市にオフィスを構える企業でのリモートワークも視野に入れておくと、さらに選択肢が広がります。最近では、リモートワークを導入する企業が増え、地方在住でも都市部の企業で働くことが可能になりました。
ただ、このような働き方を求めるのであれば、リモートワークのスキルが必要です。具体的には、オンラインでのコミュニケーション能力や、自宅での作業環境の整備などが挙げられます。
地方での仕事をするメリット
この章では、地方で仕事をするメリットについて紹介します。
地方で働くことに躊躇している人は、以下のメリットと、次章で解説するデメリット双方を把握し、最適な選択をするうえでの参考にしてみてください。
地域や人との関わり合いが強い
地方での仕事は、都市部と比べて人との距離が近いのが特徴です。ここでいう「距離の近さ」は、物理的な距離でなく、心の距離を意味しています。地方では、コミュニティや付き合いが密接であり、お互いをよく知っている傾向にあります。
地方で仕事をしていると、顧客や取引先、同僚との関係が深まり、一人ひとりとのコミュニケーションが豊かになりやすいです。これは、ビジネス以外の場面も含めた人間関係の充実にも繋がります。また、地域の伝統や文化、風習を身近に感じることができるのも魅力です。
現代の都市部では人々との関わりが希薄になりがちですが、地方で働くと、人とのつながりの大切さや、地域社会への貢献の喜びを実感できるでしょう。
満員電車や交通渋滞のストレス、都会の喧噪から離れられる
都会の生活は便利な一方で、それに伴うストレスも無視できません。毎日の満員電車や交通渋滞は、多くの都市住民にとって「日常」かもしれませんが、これが日々の生活に疲労やストレスをもたらすひとつの要因になり得ます。
一方、地方では、のどかな風景を眺めながらの運転や、混雑していない電車・バスでの通勤を実現しやすく、気持ちよく出勤できるでしょう。都会の喧噪や騒音から離れた静かな環境での生活は、心身のリラックスにも大きく寄与します。
また、地方では季節の移り変わり、地元の風物詩、新鮮な空気や水など、都会では味わいづらい自然とのつながりも深く感じられます。
生活コストが安い
地方での生活は都会に比べて、生活コストが安く済む傾向にあります。
日本全国の物価水準を見てみると、大都市圏と比べて地方の生活コストは低いのが特徴です。総務省の「消費者物価地域差指数(2021年)」によれば、物価水準が最も高いのは東京都で、指数は104.5を示しています。一方、多くの地方では100を下回る指数となっています。
また、地方では住居費や地価が都市部に比べて手頃であるため、広い住まいを手に入れられるチャンスが増えます。また、地方の市場や商店では、新鮮でリーズナブルな地元の食材を手に入れることができ、毎日の食費を抑えることが可能です。
この生活コストの安さは、地方の大きな魅力といえるでしょう。
人によっては中心メンバーとして活躍できる場合がある
地方では、大都市圏と比べて企業や組織の規模が小さく、人手不足に陥っているケースがしばしば見られます。そのため、各職場では多岐にわたる業務を任されることが多い傾向にあります。このような環境では、多様なスキルを磨く絶好のチャンスを得られるでしょう。
とくに専門的な知識や技術を持つ人材は、地方企業で高く評価されるかもしれません。たとえば、十分なITスキル・経験を持つ人は、地方の企業でIT部門の中心メンバーとして、システムの導入や運用、経営戦略の一部などDX推進の役割を任されるケースがあります。
また、地方での仕事はコミュニティとの結びつきが強いため、地域社会への影響力も大きいのが特徴です。そのため、自らのアイデアや提案が地域の発展に直接貢献することも十分に考えられます。
地方での仕事をするデメリット
地方での仕事には多くの魅力がありますが、それに伴うデメリットも無視できません。都市部に比べ、地方では職種や業種、キャリアパス、求人数における選択の幅が狭まることがあります。
この章では、地方で仕事をする主なデメリットについて紹介します。
職種や業種の選択肢が限られる
地方での仕事探しをするデメリットとして、業種や職種の選択肢が限られることが挙げられます。都市部に比べ、地方では求人のバリエーションが限定的になりやすいです。とくにITやエンターテインメント、広告業界など、一部の業種は都市部に会社が集中しているため、希望する仕事が見つからないかもしれません。
地方で働きたい場合には、その地域特有の産業や伝統的な業種・職種にまで目を向けることをおすすめします。たとえば、伝統工芸や農業、地域資源を活かした観光業など、地方には、その土地ならではの仕事もたくさん存在します。
最終的に、地方での就職を選ぶ際のポイントは「選択肢が限られている」という事実をどう捉えるかです。限られた選択肢の中で、自分のキャリアや人生の価値を見つけ出せるかどうかが、日々をイキイキと過ごすための大事なポイントになるでしょう。
進出企業が少ない
大都市圏や経済的に発展している地域に比べ、地方都市や田舎は、大手企業や新興企業の支店や工場が少ないのが実情です。企業が新しい拠点を設立する際には、人口密度が高く、経済活動が活発な地域を選ぶ傾向にあるためです。この結果、地方の若者や求職者は、希望する職種や業種での就職機会が限られがちです。
しかし、この状況は、地方の魅力や資源を活かした新しいビジネスをつくるチャンスにもなり得ます。実際、何か新しいことにチャレンジをしたいと思っている人が、地方で新規事業をリードしていったり、自分で起業したりする例も増えつつあります。
キャリアアップの機会が限られる場合がある
都市部と比較して、地方には大手企業の数や業種が少なく、昇進や異動をはじめ、キャリアアップのチャンスが限られることがあります。一部の専門的な職種や特定の業界においては、研修の機会や専門的なスキルを磨くための機会を得るのが難しいかもしれません。
しかし、地方の仕事の中には裁量範囲が広く、多岐にわたる業務を経験できるものもあります。また、地方の中小企業や家族経営のビジネスでは、経営者や上層部との距離が近いため、自らの意見や提案を直接伝えやすい環境にあります。新しいプロジェクトや改善提案を行い、事業・会社とともに自分が成長・キャリアアップする大きなチャンスを掴むことは可能です。
つまり、地方でのキャリアアップの機会は都市部とは異なる形で存在しています。地方でも成長することはもちろん可能です。そのためには、自らのキャリアビジョンを明確にし、地方の環境を最大限に活用することが重要です。
地方での仕事探しをしている人は支援制度を活用してみよう
最近では、地方の活性化や若手人材の確保を目的として、国や自治体がさまざまな就職・転職支援制度や移住支援制度を提供しています。
ここでは、主な支援制度について紹介します。地方での新しい生活やキャリアを築く際の一助として、ぜひこれらの支援制度を活用してみてください。
無料・宿泊費減免などお得に利用できる「お試し移住」
「お試し移住」とは、地方自治体が都市部からの移住を促進するために提供する制度です。地方への移住を検討中の人が、実際にその地域での生活を体験できるもので、多くの自治体では一定期間の宿泊費を減免したり、完全に無料で提供したりしています。
「お試し移住」の最大のメリットは、実際にその場所での生活を体験し、移住の決断がしやすくなること。都市部とは異なる地方の魅力や生活環境を実感することで、移住の意欲が高まるかもしれません。
また、この期間中に地域の人々との交流を深めれば、地域のコミュニティに溶け込みやすくなります。さらに、地域の仕事やビジネスの機会について知ることができ、将来的なキャリアプランを考えるうえでの参考にもなるでしょう。
「お試し移住」は、大きなリスクなしに地方での生活を体験する絶好の機会です。興味がある方は、興味を持った自治体のホームページや情報窓口、案内所で詳細を確認してみてください。
各自治体独自の就活支援制度
日本の多くの自治体は、地方の活性化と若者の定住を促進するために、以下のような独自の就活支援制度を提供しています。
- 交通費補助
- 奨学金返済免除・支援
- 住宅・転居支援
- 職業訓練
- 就職・移住支援
- インターンシップ
- 移住・就労体験事業など
このような制度は、遠方からの就職活動や地方企業への就職が決定した場合であっても、経済的な負担を軽減することができるため、地方で働きたい人にはありがたいサポートといえます。
制度の内容・名称は自治体によって異なるため、具体的な内容や利用方法については、希望する地域の公式ウェブサイトや自治体窓口で詳しく確認してください。
地方企業に就職した場合の奨学金の返還支援制度
多くの自治体では、地方企業への就職を奨励するための独自の支援策を実施しています。その中でも注目されているのが「奨学金の返還支援制度」。地方の企業や団体に就職することで、学生時代に受け取った奨学金の一部や全額が免除されるものです。
この制度の目的は、地方の人材不足を解消し、地域経済の活性化を図ることです。都市部からのUターンやIターンを検討している若者にとって、経済的な負担を軽減する大きなメリットとなります。
ただし、制度の詳細や対象となる奨学金、支援の範囲は自治体や企業によって異なるため、利用を検討する際は、各自治体の公式サイトや求人情報をしっかりと確認することが必要です。
地方自治体の返済免除型奨学金制度
多くの地方自治体では、返済免除型の奨学金制度を導入しています。この制度は、特定の条件を満たす学生に奨学金を提供し、その後、地方での就職や定住を条件に奨学金の返済を免除するものです。
たとえば、地方での就職や起業、地域貢献活動などの条件を満たすことで、奨学金の一部または全額が返済免除となる場合があります。この制度を利用すれば、高等教育を受けるための経済的な負担を軽減できるだけでなく、地方での生活やキャリア形成を積極的に検討するきっかけとなるでしょう。
こちらも興味がある人は、各自治体のホームページなどで詳しく調べてみてください。
まとめ
大都会と比べれば、人口の少ない地方ではキャリアの選択肢が狭くなりがちで、不便さも付きものです。しかし、最近では多くの支援制度や施策が用意されていることがあるため、地方で新たなスタートを切り、人生を充実させることは可能です。
本記事で紹介したように、地方には多くの魅力や可能性があります。都会の喧騒から離れ、地域や人々との深いつながりを感じながら働くことは、人生やキャリアに新たな喜びをもたらしてくれるでしょう。
ただし、働き方やライフスタイルの形に正解はありません。だからこそ、地方で理想の働き方をするためには、まず自分が何を求めるのか、どんな仕事・働き方が理想なのかを明確にしておくことが重要です。そのうえでしっかりとリサーチを行い、納得できる仕事選びをしてください。