育休明けすぐに退職はできる?円満退社する際のポイントについて解説

もともとは職場復帰するつもりで育休に入ったとしても、いざ育児が本格的にスタートすると、思っていた以上に大変!と感じてしまうママさんは少なくありません。

家族の事情や自身のコンディション不良などのさまざまな理由で、「育休後の退職」を考える人もいます。

この記事では、育休明けすぐの退職は問題なくできるのか?や、退職したいことを会社に伝えるタイミング、そして円満退社する際のポイントについて解説します。

目次

育休明けに復帰せずすぐに退職することは可能

育休明けに職場復帰せず、すぐに退職すること自体は可能です。

育休後の退職は法律違反ではないため、やむを得ない理由がある場合などには会社に相談してすぐに退職することができます。もともと復職するつもりであったなら、育児休業給付金を満額受け取ることも可能です。

育児休業給付金は返金不要

育休期間満了後すぐに退職する場合でも、育児休業給付金は満額支給され、返金も不要です。

本来、育児休暇給付金は復職することが前提として給付されるものです。しかし、当初は復職して仕事と育児を両立するつもりだったとしても、やむを得ない事情や環境の変化などにより、復職が困難になることもあるでしょう。

そのため、育休明けにすぐに退職をすることになった場合でも、育児休業給付金の返金は一切不要です。

育児のために退職する場合は失業保険を延長できる

育休明けに退職する場合でも、再就職を予定していれば、条件を満たすことで「失業保険」の受給が可能です。

一般的に、失業保険を受給できるのは、退職前の過去2年間で雇用保険に12ヶ月以上加入していて、なおかつ再就職する意思があり、求職活動を行える人です。

ただし、「育児などの理由で継続して30日以上就職できない」場合などは、「特定理由離職者」として認めてもらえるケースがあります。特定理由離職者は、離職の日以前1年間に雇用保険の被保険者期間が通算して6ヶ月以上あれば、失業保険を受けることができます。

また、失業保険の受給は原則「離職日の翌日から1年間」ですが、申請手続きをすることで、仕事に就けない期間分(最大4年間)受給期間の延長が可能です。

そのため、退職後にすぐには働けない場合でも、子育てが落ち着いてから再就職をする際に、失業手当を受給できるようになります。

退職する前提で育休は取得できない

育休明けに退職すること自体は可能ですが、「退職を前提に」育休を取得することはできません。

育休を取得すると、休業中に「育児休業給付金」を受け取れますが、育児休業給付金は復職することが前提として給付されるものなので、退職を前提には取得できません。

育休に入る時点で退職を予定していると支給対象とならず、不正受給とみなされるため注意しましょう。

育休明けに退職する理由

令和3年度の雇用均等基本調査によると、育休明けに退職するママは6.9%と一定数いる状況ですが、ママたちはどのような理由で退職するのでしょうか。

主な退職理由は、次のとおりです。

復職までに保育園が決まらない

育休を終了して復職するまでに、保育園が決まらないことが理由で退職する場合があります。

祖父母と同居していたり、近くに親族が住んでいたりする場合は仕事中に子どもを見てもらう選択もしやすいでしょう。しかし、両親が遠方に住んでいると、保育園が決まらなければ子どもを預ける場所がなく、復職が難しくなってしまいます。

こども家庭庁の調査結果によると、待機児童は減少傾向にあるものの、地域によってはまだ高い保育ニーズがあるようです。「子どもを預ける場所がなければ働けない」と、退職を考えるケースが出てくるのも仕方がないといえるでしょう。

参考:保育所等関連状況取りまとめ(令和5年4月1日)及び「新子育て安心プラン」集計結果を公表|こども家庭庁

家庭の事情

家庭の事情で退職を考えるケースもあります。

たとえば、夫の転勤や遠方に住む家族の介護といった事情で、引っ越しが決まるケースです。引っ越し先に会社の支店などがあれば、そちらに異動願いを出して退職を回避できるかもしれません。しかし、そのような方法を実現できない限り、遠方への引っ越しが決まれば退職せざるを得ないでしょう。

このような場合は、引っ越しが決まった時点で会社に相談して、退職日を相談する必要があります。育児休業給付金は退職日まで支給されるため、育休の最終日に退職日を設定するとよいでしょう。

復職後の待遇に不満がある

職場復帰後に異動を提示されたなど、復帰後の待遇に不満があり退職するケースもあります。

たとえ異動の理由が「育児と仕事の両立への配慮」だったとしても、自身の希望と合わない部署や職種への異動であれば、嫌がらせのように受け取ってしまうこともあるでしょう。

ただし、法律では、育休明けの人事異動自体は違法ではありません。「育休明けには元職(育休前の部署)への復帰を原則とし、育休前後の配置について配慮すること」が企業の努力義務とされているものの 、それが実現できなくても法律違反にはなりません。

とはいえ、子どもがいても育休前と同様にバリバリ働きたいママにとっては、異動先に納得できないと、転職を検討することも仕方がないといえそうです。

自身や家族の体調不良

ママ自身や家族の体調が悪いために、退職を考えることもあります。

育児は実際に経験してみないとわからないことも多く、いざ子どもとの生活がスタートすると、疲れやストレスで体調を崩してしまうことも。ママ自身の体調が悪く、復職して普段どおりに働くのが難しいようであれば、退職がひとつの選択肢になります。

また、家族の体調不良も予測できるものではありません。育休終了後すぐに退職することになっても、やむを得ない選択といえるケースもあるでしょう。

家庭との両立が難しい

育休中の育児が想像以上に大変だったなど、仕事との両立の難しさが理由で退職を検討することもあります。

現在の職場では仕事を続けるのが難しいと感じて「残業が少ないなど、より育児と両立しやすい仕事をしたい」と思うこともあれば、「子育てに専念したい」という理由で退職する場合もあるでしょう。

他にも、近くに住む祖父母に子どもを見てもらう予定だったのが、急な祖父母の病気など、想定外の理由で家庭と仕事の両立が困難になる場合もあります。

育休の取得時には復帰するつもりでも、このような周囲の事情や心境の変化で退職を検討するケースも多いです。

退職の希望を職場に伝えるタイミング

育休明けに退職を検討するとき、まず「どのタイミングで会社を辞めるべき?」「いつ職場に伝えたらよいだろう?」と悩む人は多いのではないでしょうか。

ここからは、退職の希望を職場に伝えるベストなタイミングと、タイミング別に注意したい点をご紹介します。

育休明けの復帰後に退職を申し出るのがベスト

育休明けに退職をする場合、一度復帰してから退職を申し出るのがベストな選択肢です。

「育休明けに復帰せず退職する」もしくは「育休中に退職する」ことも可能ですが、これらの方法はママ自身や会社にとって、あまりよいことではありません。

もらえるはずの給付金を受け取れなくなったり、退職後に再就職をしても、さらに家庭との両立が難しくなったりする可能性があります。また、お世話になった会社に迷惑をかけてしまうことにもなるため、やむを得ない事情がない限りは避けたほうがよいでしょう。

一度復帰してから退職すると、このような状況になるのを回避できるため、まずは一度職場に復帰することを検討しましょう。

タイミング別の注意点

一度復帰してから退職を申し出るのがベストですが、引っ越しや体調不良などの理由により、退職を伝えるタイミングを選ぶのが難しい場合もあるでしょう。

以下では、退職のタイミング別の注意点を紹介するので、参考にしてください。

育休の途中

育休途中の退職は、もっとも避けたいタイミングです。

育休中に退職すると、その時点で育児休業給付金がもらえなくなってしまいます。退職日までに支給済みの給付金は返還する必要はありませんが、退職後は給付金を取得できないため注意してください。

また、育児休業給付金は日割りにならないため、退職日によっては1ヵ月分の給付金がもらえなくなる可能性があります。

さらに、社会保険料の免除もなくなり支払いが必要になるため、金銭的な負担が増えることに注意しましょう。

育休明け

育休明けに退職すれば、育児休業給付金をすべて取得してから退職できるため、育休中に退職するよりも金銭面での恩恵を受けられます。

ただし、育休明けに復帰せずすぐに退職すると、会社にとっては大きな損害となってしまいます。退職理由や伝え方によっては会社に迷惑をかけてしまう可能性がある点に注意が必要です。

さらに、退職後に転職をしたとしても、必ずしも育児と両立しやすい状況になるとは限りません。たとえば、時短勤務制度は、会社の就業規則によって「入社後1年未満は適用の除外」とされるケースがよくあります。また、有給休暇も入社して6ヵ月以上勤務しなければ付与されないことが多いです。

転職活動は想像以上に苦労することもありますし、環境の変化から一時的に負担やストレスが増大する可能性も考えられます。そのため、まずは一度もとの職場に復帰して、ワーママとしての働き方がどのようなものかを理解したうえで退職・転職をするほうがよいでしょう。

職場復帰後

一度もとの職場に復帰後に退職する場合、育児休業給付金と有給休暇を取得したうえで退職できるため、金銭面では最も安心感を得られるタイミングです。

ただし、復職してすぐに退職するのは避けましょう。たとえば、有給休暇を消化して数日程度で退職するといった方法は、会社によい印象を与えず、不信感を与えてしまうこともあるでしょう。

また、退職後に転職をする場合も、ワーママとして働くことに慣れていなければ、転職先でも家庭との両立が困難になり、また退職を考えるようになるかもしれません。

まずは有給休暇を取得しながら半年ほど勤めることで、育児をしながら仕事を無理なくこなす方法が見つかり、退職せずに済む可能性もあります。そのため、まずは復帰してしばらく少し様子を見るのも選択肢のひとつです。

育休明けに円満退社するために注意したいポイント

育休明けに退職する場合は、なるべく会社の迷惑にならないよう配慮することが必要です。
育休明けすぐに円満退社するために、次のポイントに注意しておきましょう。

まずは復帰してから退職をする

育休明けに円満退社するには、まずは一度復帰してから退職することが大切です。

もともと、育休は「復帰後、1年以上働く意思がある労働者」のための制度なので、会社は復帰を前提にして、人事や仕事を割り振っているはずです。そのため、復職後すぐに辞めてしまったら、会社に対しては少なからず損失を与えます。

「自分はもう辞めるから」と軽く考えてしまうかもしれませんが、会社側からすれば、自己都合で復職を破棄されたことに不信感を募らせるかもしれません。そうなると、今後、同じ職場の育休を取得する女性に悪影響を及ぼす可能性があるため注意しましょう。

やむを得ない退職理由を伝える

退職したいことを会社に話す際には、「自身や家族の体調不良」「家庭の事情による引っ越し」など、やむを得ない理由があることをきちんと伝えるようにしましょう。

育休取得後の退職は法律上禁止されているわけではありません。ただし、本来はマナー違反となるため、話をうやむやにせず、やむを得ない理由があることをしっかり説明しましょう。

もし会社への不満があったとしても、会社に対する否定的な内容を退職理由にするのは避けるのがベターです。環境の改善などを提案されて、引き止めにあうかもしれません。やむを得ない理由を伝えれば、無理に引き止められることなく、スムーズに退職手続きを進められるでしょう。

繁忙期を避ける

退職する時期は、繁忙期を避けることも大切です。

繁忙期は会社にとって業務が多く慌ただしい時期なので、とくに育休明けの時期が繁忙期にあたる場合は、復職への期待も大きいはずです。育休は本来復帰する予定で取得するため、人員の補充をせずに復帰を待っている可能性も高いでしょう。

そのようなときに退職を申し出ると、さらに周囲の負担が大きくなり、ママ自身の信頼を損ねてしまうことにもつながるため、繁忙期の退職はなるべく避けるようにしましょう。

まずは会社に相談する

復帰して仕事を続けることに不安があるなら、まず会社に相談するのもひとつの方法です。会社に相談することで悩みの解決につながり、退職せずに済む可能性もあります。

たとえば、「保育園の送迎時間に間に合わない」「育児の負担が大きく仕事と両立できない」といった悩みを会社に伝えた結果、時短勤務やテレワーク、フレックスタイム制度のような、柔軟性の高い働き方を実現できるかもしれません。

会社にとっても、優秀な人材が育児を理由に退職するのは損失でしかなく、そのような制度の利用によって離職率が低下すればメリットを得られます。そのため、育児の負担が大きいという理由で復帰が難しい場合には、まずは会社に相談してみるとよいでしょう。

有給休暇を消化する

有給休暇が残っているなら、退職前に必ず消化するようにしましょう。

育休中には有給を消化できませんが、育休が終了し、一度復帰した後であれば、働く人の権利として有給休暇を消化できます。退職日を決め、それまでの間に有給を消化しましょう。

「育休明けに有給を消化して復職し、一度も勤務しないまま退職する」ことも法律的には問題ありません。しかしながら、まったく復帰せずに有給休暇だけを消化してそのまま退職すると、会社にはあまり良い印象を与えない可能性が高いため、気をつけたいところです。

退職日が決まったら早めに報告する

退職する意向が決まったら、早めに会社に伝えましょう。

法律的には辞めたい日の「2週間前でよい」ですが、退職の申し入れについては、「退職予定日の1ヶ月前」など、会社の就業規則で決められていることが多いです。就業規則を確認したうえで、できるだけ早めに報告するとよいでしょう。

そして、残る人に負担がかからないよう、後任が決まったらしっかりと引き継ぎを行います。後任が決まらなければ、業務の内容をマニュアルとしてまとめておき、後で見直せるようにしておくことも有効です。

退職日までは引き継ぎなどで忙しくなるため、自身の体調管理にもしっかりと注意を払うようにしましょう。

他の解決策も検討してみる

退職以外の方法を検討してみるのも選択肢のひとつです。

退職後に転職を考えている人もいるかもしれませんが、子どもが幼いワーママの転職は、選考でやや不利になりやすいといわれます。そのため、なるべく退職せずに済む方法を検討してみてもよいでしょう。

たとえば、「育児との両立が難しい」場合には、自治体のファミリーサポートやベビーシッターに子どもの送迎などをしてもらう方法があります。ベビーシッターへの依頼は高額になることもありますが、自治体や国の補助金を活用してお得に利用できる場合もあるので検討してみるとよいでしょう。

また、「保育園に入園できない」ために退職を考えている場合は、条件を満たしていれば、最長で子どもが2歳になるまで育休を延長できます。保育園からの「保育所入所保留通知書」を提出すれば、会社が手続きを行ってくれるため、まずは会社に相談してみるとよいでしょう。

まとめ

育休明けすぐに退職することは可能です。

たとえ育休明けすぐに退職しても、育児休業給付金を返金する必要はありません。また、育児を理由に退職する場合は、失業保険の給付期間延長も可能なため、すぐに働けなくても転職活動をする際に失業保険を受給できる可能性があります。

退職のタイミングとしては、やむを得ない理由がない限りは、一度復帰して半年程度働いてから退職するのがベストです。できる限り会社に迷惑をかけずに、有給を消化しながらワーママとしての働き方に慣れることもできます。

ただし、いざ辞めることを決めた場合は、「希望の退職日を早めに報告する」「やむを得ない事情があることをしっかりと伝える」など、辞め方、伝え方に配慮が必要です。きちんと配慮をすれば、育休後でも円満に退社することができるでしょう。

無料LINE登録をしてみる