目次
顧客分析とは
顧客分析とは、文字通り、自社の商品・サービスを購入してくれる顧客について分析すること。さまざまな手法で顧客の属性や購買履歴などを分析し、顧客理解をさらに深め、より効果的なマーケティング戦略の立案や売上の向上などを目指します。
代表的な分析項目としては、以下が挙げられます。
- 顧客の属性(年齢、性別、職業、地域など)
- 購買履歴(何をいくらでどのように購入したのか、購入日や購入頻度など)
- 顧客が抱えている課題、ニーズ
- 顧客の意思決定プロセス、購買プロセス
- 顧客の満足度
- 自社のアクション履歴(どのような施策を行ったのか)
やや語弊があるかもしれませんが、かつては「良い商品・サービスを作れば売れていく」という時代でした。しかし昨今は、インターネットの発展やSNSの普及により、消費者ニーズは多様化し、顧客の購買行動も複雑化しています。ゆえに、良い商品・サービスを作るだけでは売れない時代になっているのです。
「顧客が何を求めているのか」をさまざまな角度から分析し、顧客一人ひとりに合わせて最適なアプローチを行わなければ、なかなか利益を生み出すことは難しいでしょう。
そこで大切なのが「顧客分析」です。次章では、顧客分析のメリットや重要性について触れていくので、ぜひ参考にしてください。
顧客分析を行うメリット・重要性
顧客分析を行う主なメリットは、以下の5点です。
- ターゲットの深掘りができる
- 顧客のニーズを理解できる
- 新商品の開発やサービスの改良に役立つ
- 最適なマーケティング戦略を実施できる
- 顧客の満足度を高められる
順に見ていきましょう。
ターゲットの深掘りができる
顧客分析を行うメリットとして、まず、「ターゲットの深掘りができる」ことが挙げられます。
ターゲットが曖昧な状態だと、いくら素晴らしい商品・サービスを扱っていても、売上にはつながりにくいです。ゆえに顧客分析を行い、「どの層に向けて重点的にアプローチすべきなのか」あるいは「自社商材はどのような層に求められているのか」を把握する必要があるでしょう。つまり、ターゲットの特定・深掘りを行うわけです。
例えば、顧客の属性や購買履歴などを分析すれば、「20代女性のリピート率が高い」「40代・50代男性はほとんどリピートしてくれない」という情報が明らかになるかもしれません。よって、「売上につながりやすいターゲット」を特定できるため、その優良顧客に向けて集中的なアプローチを行う、といった選択を取れるようになります。
顧客のニーズを理解できる
「顧客のニーズを理解できる」という大きなメリットもあるでしょう。
会社側が思っている「良い商品」と、顧客にとっての「良い商品」は、決してイコールではありません。「この機能を付けたら売れるだろう」「値段を下げたら売れるだろう」と戦略を立てても、実際はなかなか思い通りにいかないものです。「商品・サービスの価値を決めるのは顧客である」ことを頭に入れておきましょう。
「顧客の声やニーズを把握するためにはアンケート調査が有効である」と思っている方も多いのではないでしょうか。もちろんアンケート調査も効果的ですが、アンケートの場合、顕在的なニーズしか見えてこない可能性があります。一方で顧客分析は、自社の商品・サービスを購入してくれる顧客について分析すること。顧客の潜在的なニーズまで導き出すことが可能です。
- 使いやすいのか
- 機能は十分なのか
- 価格は高いのか低いのか
- デザインはどうか
- ブランドを感じているか
- 他社製品と比べてどうなのか
顧客分析を実施すれば、上記のようなニーズを抽出でき、結果的に顧客ファーストのビジネスを展開していけるはずです。
新商品の開発やサービスの改良に役立つ
顧客分析は、「新商品の開発やサービスの改良」にも役立ちます。
上述の通り、顧客ニーズを把握できれば、「顧客がどのような商品・サービスを求めているのか」が明確になります。ゆえに、ニーズを反映した新商品・新サービスを開発できますし、既存の商品やサービスに関しても、より顧客の要望に合わせた形にアップデートしていけるでしょう。
商品の売上が好調だからと言って、顧客のニーズに完全にフィットしているとは限りません。他に同じような商品がなくて、仕方なく選んでいる可能性だってあるでしょう。もし競合他社が、顧客のニーズにフィットした商品を販売し始めてしまったら、一気にシェアを奪われてしまうかもしれません。
そのため、常に顧客ニーズを分析し、商品・サービスのブラッシュアップを続けていく姿勢が大切です。
最適なマーケティング戦略を実施できる
「最適なマーケティング戦略を実施できる」というメリットもあります。
上述のように、顧客分析を行うことで、「どのターゲットを狙うべきなのか」「ターゲットが本当に求めているものは何なのか」を把握できます。また、顧客の意思決定プロセスや購買プロセスを分析することで、「どのタイミングでどのようなアプローチを行うのがベストなのか」が明確になるでしょう。
そのため、自社都合のマーケティングではなく、「顧客の行動に合わせたマーケティング」を実施できるようになります。
当たり前ですが、当てずっぽうでマーケティング戦略を考えても、大きな効果は望めません。もしかしたら、完全に無駄なコストを費やしてしまう可能性もあります。しかし顧客分析を徹底すれば、「このターゲットにこのタイミングでこのアプローチをすべき」というレベルまで明確にできるため、マーケティング活動の費用対効果も最大化できるでしょう。
顧客の満足度を高められる
最後のメリットとして、「顧客の満足度を高められる」ことが挙げられます。
顧客満足度を向上させるためには、顧客の潜在ニーズを把握し、そのニーズを満たすような商品・サービスの提供が欠かせません。また、顧客が満足している部分をさらに伸ばし、不満に思っている部分はどんどん解消していくことが非常に大切です。
そのためにはやはり顧客分析が効果的であり、「いかに顧客ファーストの姿勢を貫けるか」が重要なポイントになってきます。顧客満足度を高められれば、リピーターの増加・ブランディングの強化などが期待できるでしょう。ひいては、速やかな事業拡大・企業の持続的な成長にもつながるはずです。
顧客分析の代表的手法6選
この章では、「顧客分析の代表的手法・フレームワーク」を紹介していきます。
具体的には、以下の6つです。
- セグメンテーション分析
- デシル分析
- RFM分析
- 行動トレンド分析
- CTB分析
- NPS
ぜひ参考にしてください。
セグメンテーション分析
セグメンテーション分析とは、顧客の属性・ニーズ・購入履歴などによって細分化(グループ分け)していく手法です。
主な分類方法としては、以下の4つが挙げられます。
- 地理的変数(居住地、人口密度、気候など)
- 人口動態変数(年齢、性別、年収、家族構成)
- 心理的変数(趣味嗜好、性格、価値観、ライフスタイルなど)
- 行動変数(購入頻度、購入経路など)
例えば、年齢や性別でグループ分けする場合もあれば、職種や勤務先情報でグループ分けする場合もあるでしょう。顧客をグルーピングしたうえで、「見込み度の高いグループ」に対して積極的にアプローチしていくわけです。
ターゲティングの初期段階や自社のポジショニングを決める際には、セグメンテーション分析が大きく役立つでしょう。
デシル分析
デシル分析とは、「顧客の購入金額」に応じてグループ分けをしていく手法です。
購入金額の高い順に顧客リストを並べ、10段階でグループ分けを行い、「自社の売上に貢献してくれている優良顧客」を見つけ出します。
※デシル:「10等分」「10分の1」という意味を持つラテン語
デシル分析を行えば、各グループの売上比率や貢献度を可視化できるので、効率的にマーケティング活動を進めていけるでしょう。難しい分析手法ではありませんので、ぜひExcelなどを利用して、デシル分析を行ってみてください。
ただし、
- たまたま購入金額が高かっただけで、普段はあまり買い物をしない
- 数年前までは大口顧客だったが、最近はもう取引をしていない
このような顧客が上位グループに含まれてしまうケースもあるので、十分に注意してください。
RFM分析
RFM分析とは、以下の3つの指標に着目し、顧客をスコアリングしていく手法です。
- Recency(最新購入日):購入日が最近であるほど高スコア
- Frequency(購入頻度):購入頻度が高いほど高スコア
- Monetary(累計購入金額):購入金額の合計が大きいほど高スコア
当然、3つのスコアが全て高ければ、「最優良顧客」と判断できます。
また、以下のように分類することも可能でしょう。
- Recencyスコアのみ高い→新規顧客
- Monetaryスコアは高いが、Frequencyスコアが下がっている→他社に流れている可能性のある休眠顧客
- Monetaryスコアは高いが、Recencyスコアが下がっている→しばらく購入のない離反顧客
行動トレンド分析
行動トレンド分析とは、「時期・シーズンによって売上が変化すること」に着目した分析手法です。
顧客の購買データを分析し、「季節・気候・曜日・時間帯によって購買行動がどのように変わるのか」を明らかにしていきます。例えば、
- 〇〇地方に住んでいる人は、夏に〇〇をよく購入してくれる
- 〇〇歳~〇〇歳の人は、休日や祝日に〇〇を購入する傾向がある
といったイメージです。
行動トレンド分析を行えば、以下のようなメリットが期待できるでしょう。
- ニーズの変化に合わせてマーケティング施策を打てる
- 適正な在庫管理が可能になる
- ターゲットを絞りながら販促できる
- 注目されやすいタイミングでキャンペーンを実施できる
CTB分析
CTB分析とは、以下の3つの軸で、顧客をグルーピングしていく手法です。
- Category(カテゴリー):商品やサービスの種類
- Taste(テイスト):色、形、模様、サイズなど
- Brand(ブランド):企業が展開しているブランド、キャラクターなど
「可愛い子供服を頻繁に買っている女性」「特定のキャラクターのファン」「奇抜なデザインを好んでいる人」といったイメージで、顧客をグルーピングしていくわけです。その結果、「それぞれのグループの購買傾向」を予測できるようになるでしょう。ゆえに、グループごとに最適な商品・サービスを提供でき、顧客満足度の向上につながります。
NPS
NPSとは、顧客ロイヤリティを測定するための手法です。つまりは、「自社ブランドに対する顧客の信頼度や愛着度」を計測するための分析手法だといえます。
具体的な手順は、以下の通りです。
- 「この商品を他の人にどれくらい薦めたいと思いますか?0点~10点で回答してください」という質問をしていく
- 0点~6点を付けた回答者→「批判者」
- 7点~8点を付けた回答者→「中立者」
- 9点~10点を付けた回答者→「推奨者」
- 推奨者の割合から、批判者の割合を差し引く→NPSの最終的なスコア
最終的なスコアがプラスの数値ならば、顧客ロイヤリティは高いと判断できるでしょう。反対に、マイナスの数値であるならば、ロイヤリティが低下している証拠です。顧客分析をさらに進め、今まで以上に顧客ファーストのビジネスを展開するようにしてください。
顧客分析を行う際のコツ・ポイント
この章では、「顧客分析を行う際のコツやポイント」について簡単に解説します。
- 顧客を定義する
- 課題やニーズを掘り下げる
- 顧客の購買プロセスを分析する
- 市場の成長性も加味する
ぜひ頭に入れておきましょう。
顧客を定義する
まずは、ターゲット・ペルソナを明確にして、「自社にとっての顧客」を定義しましょう。顧客の定義が曖昧なままだと、「どの分析手法が最適なのか」を判断することができません。また、顧客の範囲が定まっていないと、分析結果もズレやすくなるでしょう。
多少時間がかかっても構いませんので、しっかりとユーザー像を明確化してください。
課題やニーズを掘り下げる
「課題やニーズを掘り下げる」ことも重要です。
顧客分析では、顧客の属性や購買履歴など、ついつい可視化しやすいデータばかりを扱ってしまいがちです。しかし、それだけでは顧客の満足度を高めることはできません。大切なのは、顧客の課題やニーズを把握し、深掘りしていくことです。
- どのような課題を解決したいのか
- 本当に求めているものは何なのか
- どのようなアプローチを望んでいるのか
- 不平や不満はあるのか
このような情報を把握できれば、顧客理解がさらに進み、「顧客目線のビジネス」を展開していけるでしょう。
顧客の購買プロセスを分析する
「顧客の購買プロセスを分析する」のも忘れないでください。
1章でも触れましたが、昨今は消費者ニーズが多様化し、顧客の購買行動も複雑化しています。顧客がどのように自社商品を認知し、どのような感情を抱き、どのような理由で購買まで至ったのか。そのプロセスを分かりやすくまとめ、分析してみましょう。カスタマージャーニーマップを作成するのも効果的です。
基本的に、顧客は「認知フェーズ→興味関心フェーズ→比較検討フェーズ→購入フェーズ」という順番で行動していきます。各フェーズの課題は何なのか、どのタイミングでどのようなマーケティング施策を打つべきなのか、しっかりと分析・研究してみてください。
市場の成長性も加味する
顧客分析は、マーケティング活動の最適化や売上の向上などに大きく役立ちますが、決して万能なわけではありません。
たとえ完璧な顧客分析を行い、効果的な戦略を立案できたとしても、これから衰退していく市場においては、あまり効果は見込めないでしょう。反対に、これから成長していく市場においては、何もしなくても売上は上がっていくかもしれません。しかし、競合他社が伸びてきて、いきなりシェアを奪われてしまう可能性もあるでしょう。
だからこそ、単純に顧客分析を行うだけでなく、常に「市場の成長性」も考慮しておくことが大切なのです。
SFA/CRMを活用するのもおすすめ
顧客分析を行う際は、前述したフレームワークに加えて、専門ツールも活用していくのがベストです。例えば、以下のようなツールです。
- SFA(Sales Force Automation):営業支援システム
- CRM(Customer Relationship Management):顧客関係管理システム
膨大な顧客データを収集・管理するのは、決して簡単なことではありません。
しかし、SFA/CRMを活用すれば、自動的に顧客情報を蓄積できますし、購入履歴や営業履歴などもスムーズに管理することが可能です。そのため、より素早く、より正確に顧客分析を行えるようになるでしょう。
まとめ
「顧客分析」を効果的に行う手法として、主に以下の6種類が挙げられます。
【顧客分析の代表的手法6選】
- セグメンテーション分析
- デシル分析
- RFM分析
- 行動トレンド分析
- CTB分析
- NPS
マーケティング活動を行ううえで、顧客分析は欠かせません。ぜひ当記事を参考にしながら、自社に合った顧客分析を行ってみてください。