組織やチームの営業力を強化して成果につなげるには、一連の営業プロセスを“見える化”して営業活動の効率化・最適化を図ることが大切です。
今回は、営業プロセスを見える化するメリットと営業力強化のコツについて解説します!
目次
営業プロセスとは
営業プロセスとは、「最初の顧客接点(リード獲得)から受注へと至るまでのプロセス」のことです。
営業活動には、「リード(見込み顧客)獲得」「アプローチ」「商談」「契約」「アフターフォロー」といったプロセスがあります。これらの営業活動におけるフローを細分化し、可視化したものが営業プロセスです。
営業は、一連のプロセスを一人で進めるケースが多く、自己完結しやすい業務です。そのため、「担当者個人のスキルに成果を依存しがちになる」「担当者の不在時に他のメンバーでの対応が困難になる」といった課題がありました。
しかし、個々のやり方に委ねられていた営業プロセスを明らかにし、一目でわかるようにすること、つまり“見える化”して共有することで、業務の属人化を防ぎ、より効率的な営業活動が可能になります。
そのため、現在では多くの組織で営業プロセスの見える化が進められています。
営業プロセスを見える化するメリット
営業プロセスを見える化すると、営業活動の効率化や組織全体のコスト削減など、いくつものメリットがあります。
具体的なメリットとしては、次の3つが挙げられます。
課題・ボトルネックの発見
営業プロセスを見える化する大きなメリットは、営業活動における課題やボトルネックを発見できることです。
営業プロセスを誰もが目で見てわかるように可視化すれば、プロセスのどの段階に問題があるのかを発見しやすくなります。
たとえば、「商談から契約につながらない」「リピート率が低い」といった場合、営業プロセスを明らかにしておくと、どの段階に問題があるのかを特定したうえでの分析が可能です。そのため、「提案内容が弱い」「クロージングがうまくできていない」などの原因を探りやすくなり、具体的な改善策を講じることが可能なため、効率的に改善を進められます。
効率的な人材育成
営業プロセスの可視化は、人材育成にも役立ちます。
現在では、少子高齢化や働き方改革などで従業員(スタッフ)が減少傾向にあり、少ないリソースから大きな成果を出すことが重要になっています。ただし、従来型のOJTによる教育は、指導者・トレーナー個人の知識やスキルに左右されがちで品質にバラつきが出るなど、体系的に知識やスキルを学ぶのに適していません。
他方、営業プロセスを見える化すれば、営業の基本や営業活動の流れなどを網羅的に学ぶことが可能です。文章以外に図解や動画を使用して説明すれば、営業担当者の理解も深まりやすくなるでしょう。
結果として新人教育が短期間で済み、研修後は即戦力として働いてもらうことができるため、人材育成にかかる時間やコストを大幅に削減できます。
パフォーマンス・モチベーションの向上
営業プロセスの見える化は、営業担当者のパフォーマンスやモチベーションの向上にもつながります。
営業プロセスを作成し、リード獲得からクロージングまでの流れを明確に示すことで、営業担当者は全体の流れを理解できます。そのため、成果を出すためのイメージをもてるようになり、モチベーションを維持しやすくなります。
また、営業プロセスを標準化して属人化を解消し、チームとしての営業活動が可能になれば、自分の業務の一部を他メンバーに任せやすくなります。結果として休暇が取りやすくなることも、個々のモチベーションアップにつながるでしょう。
モチベーションは営業成績に直結するため、営業活動において重要な要素の一つです。高いモチベーションを維持できれば成果を出しやすくなり、成功体験を積み重ねる好循環も生み出しやすくなります。
基本的な営業プロセス
営業プロセスの基本的な流れは、「リード獲得」「アプローチ」「商談」「契約」「アフターフォロー」となっています。
それぞれのステップで行うことは次の通りです。
リード獲得
「リード」とは見込み顧客のことで、見込み客の情報を取得する施策のことを「リード獲得」といいます。
リード獲得は、新規顧客を増やし売上アップにつなげるために行います。リードを獲得しなければ営業活動を行えないため、リード獲得は今後の売上に影響する重要なプロセスです。
リード獲得には、オンライン上のマーケティング活動のほか、飛び込み営業、セミナーや展示会などでの名刺交換、テレアポなどの方法があります。製品やサービスに興味や関心がある見込み率の高い人をリードとして扱い、アポイントにつなげます。
アプローチ
リードを獲得したら、購入意欲の高いリードを選別し、電話・メールなどでコンタクトを取りアプローチを行います。
メールで営業を行う場合は、挨拶を含めるなど基本的なビジネスマナーを守ることはもちろん、顧客が読みやすいよう要点をまとめた文章を心掛けましょう。
アポイントを取得したら、お礼メールを送ることが大切です。もしアポイントの取得から時間が経っている場合は、訪問日の前日または当日に確認メールを送信するとよいでしょう。先方がアポイントを記録しておらず忘れている可能性もあります。確認メールを送ることで先方との認識のズレがなくなり、無駄足になるリスクを低減できます。
ヒアリング
アポイントの当日には、顧客を訪問しヒアリングを行います。
ヒアリングを行う目的は、顧客の悩みや課題を見つけ、解決策を提案することです。そのため、ヒアリングの際には顧客の話をよく聞き、課題や問題点を確認します。そして、顧客が「何に困っているのか」「何を必要としているのか」を把握することが大切です。予算や決済者、自社商品についての疑問点があるかどうかなども確認しておきましょう。
事前にヒアリングシートを作成しておくと効率的なヒアリングが可能です。ヒアリングシートを用意することで、聞くはずだったことを忘れることなく、抜け漏れのないヒアリングができます。
提案
ヒアリングによって顧客の課題やニーズを把握できたら、その最適な解決策として、商品やサービスを提案します。
提案は、事前準備が大切です。顧客に最適な提案をするために、顧客についてのリサーチや、関連する業界知識を身につけましょう。また、視覚的にわかりやすい図やイラストを使った提案資料を作成し、共有できるようにしておくことも大切です。
提案する際には、一方的に話をしないように注意しましょう。営業は、顧客の悩みや課題を解決に導くのが仕事です。会話を通じて商品やサービスによって顧客の課題が解決できることをイメージさせ、興味をもってもらえるようにしましょう。
クロージング
クロージングとは、契約に向けて商談を締めくくる段階です。
商品やサービスへの興味、費用感、導入への不安がないかなどについて質問し、懸念点があれば解消します。そして、相手の様子や反応を見ながら契約について切り出し、意思決定の有無を問いかけます。
ただし、1回の商談では決まらないケースもあるため、その場での決断を迫らずに複数の条件を提示して許容範囲を広げるとよいでしょう。
ここで購入や契約の意思決定が明確になったら、契約の締結に入ります。金額や納期などの確認を行い、契約書を取り交わします。
アフターフォロー
契約後には、メールや電話・訪問などの方法でアフターフォローを行います。
アフターフォローは軽視されがちですが、営業活動は「売ったら終わり」ではありません。顧客から問い合わせがあったときには、丁寧に対応しましょう。
また、購入してもらった後には商品やサービスの使用感を把握するなどして、顧客との信頼関係を構築することも重要です。電話やメール、訪問などの方法で定期的にコンタクトをとり、使い勝手や利用状況を確認しながら顧客満足度を高めていきましょう。
営業プロセスを設計するステップ
ここからは、営業プロセスを設計する主なステップと、各ステップのポイントについて解説します。
現在のプロセスを可視化・分解する
はじめに、現状の営業プロセスを洗い出し、分解して、営業プロセス全体を可視化します。
プロセスを可視化する際には、文章だけでなく図解を使って可視化できるようにすることがポイントです。誰でも視覚的に営業プロセスを把握しやすくなります。
営業プロセスが明らかになれば、現状の営業活動がどのように行われているのかと、うまくいっている部分・うまくいっていない部分がハッキリと見えてきます。そうなれば、改善点やプロセスにどのような行動を追加すべきかどうかも明確にすることができます。
プロセスの整理と明確化
営業プロセスを可視化した後は、各プロセスを整理し、俯瞰できるようにしていきます。
一つひとつの工程で誰が何をするのかを整理し、全員がすぐに行動できるように具体例を入れましょう。フロー図を作成する、パソコンのスクリーンショットを用いるなど、図や画像を活用して表現すると具体的でわかりやすい説明が可能です。
他にも、「営業先の訪問」のような行動の具体例を入れる場合には、動画を使用すると動きや表情といったところまで伝えられます。
データと関連づけて管理する
営業プロセスを作成したら、顧客管理などのデータと関連づけて管理します。
顧客情報・売上・成約数・問い合わせ件数・商談率などのデータと進捗状況を関連づけることで、データ分析がしやすくなり、営業活動の効率化を実現できます。
たとえば、「商談率と比べ受注率が低い」といった状況の場合、サービスや商品の訴求が適切にできていないことが推測されます。データと関連づけて管理すれば、どのような営業プロセスを立てる必要があるかがわかり、改善につなげることができるでしょう。
営業プロセスを見える化して営業力を強化するコツ
営業プロセスを見える化して営業力を強化するコツとして、次のポイントに注意しましょう。
アフターフォローまで組み込む
営業プロセスは、アフターフォローまで組み込んで作成します。
アフターフォローは契約や受注した後に行うため、忙しい営業活動においては軽視してしまうこともあるでしょう。しかし、アフターフォローをおろそかにすると、「売りっぱなし」という印象を与えてしまい顧客からの信頼が低下するおそれがあります。そのまま放置すれば競合に顧客を奪われ、今後リピート購入されなくなってしまうことも考えられます。
一方で、製品の使い勝手や導入後の課題についてヒアリングをするなど、アフターフォローを行うことで顧客満足度が高まり、顧客と良好な関係を構築できます。そのため、新規サービスの提案がしやすくなり継続購入やアップセルにつながるほか、解約率低下といった効果にもつながるでしょう。
シンプルなプロセスにする
営業プロセスは、誰もが全体の流れを把握できるよう、シンプルでわかりやすいプロセスにすることも大切です。
プロセスが多すぎると全体像がわかりにくくなってしまうため、すでに高い成果を出している担当者の営業プロセスを参考にしながら、「アプローチ」「提案」のようにシンプルなフローを心がけましょう。
わかりやすいプロセスを作成するには、作成した営業プロセスを上司や同僚に確認してもらいフィードバックをもらうとよいでしょう。フィードバックをもらうことで、誰が見てもわかりやすいプロセスを作成することにつながります。
プロセスの行動を具体的に定義する
プロセスの行動は具体的に定義することも必要です。
各プロセスにおいて、どのような業務を行うのかをはっきりとわかるように定義することで、誰もが同じように業務を進められます。逆に、具体性に欠けると、個々の担当者で認識の違いが生じて受注率に差が出てしまう可能性があります。
たとえば、「初回訪問」という営業プロセスを設定したとしましょう。しかし、定義が明確でなければ、どのような行動をもって初回訪問とするのか、担当者ごとに認識にズレが生じる可能性があります。
「製品の提案をする」のか「課題のヒアリングを行う」のかなど、それぞれのプロセスで具体的にどのような行動をするのかを明確に定義することが大切です。
顧客に合わせて作成する
営業プロセスは、顧客に合わせて作成することも有効です。
とくに、法人営業の場合は柔軟な対応が必要なため、顧客の業種などに応じて最適なプロセスを作成するとよいでしょう。
ただし、基本となる営業プロセスをもとに、営業担当者が顧客に合わせてアレンジすることも有効です。たとえば、本来の営業プロセスでは、「アポイント取得後にヒアリングを行う」と設定されていても、顧客によっては「ヒアリングを先にしたほうがよい」と判断することもあるでしょう。
このような場合には、引き継ぎとして変更点を記録したうえで、順番を変更するようにします。
PDCAを回し最適化する
営業プロセスは「作成したら終わり」ではなく、定期的に振り返り、PDCAを回しながら最適化することが必要です。
いったん営業プロセスを作成しても、それが最適とは限らないため、クロージングにつながった案件、逆にうまくいかなかった案件のプロセスをデータと照らし合わせて比較しながら振り返りを行います。
振り返りを行う際には、定量・定性の両面から分析を行うことが大切です。数字を意識することは重要ですが、定量面だけを見ていると、「なぜ受注できたのか」「なせ失注したのか」といった原因を把握するのが難しくなります。「まずは小さなミーティングを重ねて信頼関係を構築したのが有効だった」といった定性的な面からも分析や振り返りを行い、実際にPDCAを回しながら最適化をしていきましょう。
まとめ
営業活動を強化して売上向上につなげるには、営業プロセスの見える化が有効です。
営業プロセスを見える化することで、現状の営業活動における課題やボトルネックを発見し改善につなげられます。また、人材育成を効率的に行えるほか、担当者のモチベーション向上にもつながるため、コストを抑えながらもチームや組織の成果を最大化できるでしょう。
営業プロセスの見える化で営業力を強化するポイントは、誰もが認識にズレがなく全体像を把握できるよう、シンプルかつ具体的なプロセスを作ることです。また、一度作成したあとも定期的に見直し、PDCAを回しながらプロセスの最適化を図ることも欠かせません。
営業活動の無駄を省き、成果を底上げしたいときには、営業プロセスの見える化をぜひ実践してみてください。